概要
AIに振り回されていませんか?多くの企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援してきたITコンサルタントの視点から、巷に溢れる「AI万能論」や「AI不要論」といった極端な意見への違和感を解き明かし、この記事を読めば、変化の波を乗りこなし、AIを真の味方にするための本質的な思考法が分かります。
巷に溢れるAIへの極端な声
ITコンサルタントとして多くの経営者や現場の方々と話す中で、最近、AIに関して以下のような言葉を頻繁に耳にします。皆さんも一度は見聞きしたことがあるのではないでしょうか。
- 「うちの分野はAIとは関係のない事業だから」
- 「AIによってなくなる職業は〇〇だ」
- 「AIに負けない方向で頑張る」
- 「AIがあれば何でもできる」
- 「AIがあれば〇〇分野の従業員や協力会社はいらない」
これらの意見は、一理あるように聞こえる一方で、あまりに短絡的で、私は強い違和感を覚えます。
極論と現実のギャップ
多くの議論は「全てが代替されるか、全く関係ないか」という二元論に陥りがちです。しかし、現実はもっと複雑です。
極端な意見と思考停止
例1:事務職は不要になる
→ パソコン登場時と同じ議論の繰り返し。業務の本質を見ていない。
例2:コールセンターはAIに代替される
→ クレーム対応や複雑な相談など、感情の機微を扱う業務は残る。
例3:論理的な仕事は全てAI任せ
→ 弁護士やコンサルタントの仕事は、論理だけでなく経験や共感、創造性も必要。
現実的な視点と活用の道
現実1:仕事の「やり方」が変わる
→ 定型業務はAIに任せ、人間はより創造的・戦略的な業務に集中する。
現実2:AIを「使いこなす」人材が必須に
→ AIに的確な指示を出し、出力を評価・修正する能力が求められる。
現実3:AIは万能ではない「ツール」
→ 得意・不得意を理解し、人間とAIが協働する体制を築くことが重要。
なぜ違和感を覚えるのか?
私がこれらの極端な意見に違和感を覚えるのは、その根底に「思考停止」や「想像力の欠如」があると感じるからです。
「事務職がなくなる」という話は、パソコンが普及し始めた20年以上前にも全く同じことが言われていました。しかし、現実はどうでしょうか。事務職はなくならず、むしろPCスキルは必須となり、業務内容は高度化・多様化しました。AIも同様に、仕事を消滅させるのではなく、仕事の「やり方」を根本から変える存在になるでしょう。
アメリカでは既に新人プログラマの採用が30%減少したという報告もあります。[1]日本にもこの波は必ず来ます。しかし、それは「新人が不要になる」ことを意味しません。「AIを使いこなせない新人は採用されにくくなる」そして「AIを補助として使い、従来の新人の3倍のスピードで成長する人材が求められる」という変化なのです。
結局のところ、AIはあくまで「ツール(道具)」です。包丁が料理人の仕事を奪わないのと同じで、AIが人間の仕事を完全に奪うわけではありません。重要なのは、その新しい道具をいかに使いこなし、自分の価値を高めていくかです。
この視点を業務に活かすには
- 自社の業務分析:「なくなる仕事」ではなく「AIで効率化できる部分」と「人間にしかできない価値」を切り分けて分析する。
- 人材育成計画の見直し:AIを使いこなすためのリテラシー教育や、プロンプトエンジニアリングの研修を計画に盛り込む。
- チームでの対話:「AIに負けない」という対立構造ではなく、「AIとどう協働するか」をテーマにチームで議論する場を設ける。
あなたへの問いかけ
あなたの会社では、AIを「思考停止の言い訳」にしていませんか?
それとも、「未来を切り拓く武器」として活用できていますか?
経営・ITコンサルタントとしての私の意見
今回の記事は、私の思いを告げさせていただきました。私がズブの素人としてシステムエンジニアとして社会人になったときにITという業務に過剰な希望を持ち、万能感を感じたり、不要論なんて言いすぎだと感じていました。しかし、実際にシステムエンジニアとしての経験を積むうちにITの可能性と限界の両方を知ることになりました。
現在は中小企業診断士という資格を取り、様々な中小企業の経営者とお話をすることがありますが、対話型AIに関する話は上記の通り、様々です。
そして、システムエンジニアとしてITの変遷を追ってきた感覚、対話型AIを2000時間以上、経営支援で様々な業種で50社以上使ってきた自分からすると、随分と違和感を覚えており、今回の記事を作成させていただきました。
結論:大切なのは「適応」と「学び」
AIの進化は止まりません。シンギュラリティが現実味を帯び、社会構造は大きく変わっていくでしょう。しかし、どんな未来が来ようとも、本質は「役割ややり方が変わるだけ」です。
本当に大切なのは、以下の3つの力だと、私は確信しています。
- 変化を恐れず、流れを読んで適応する力。
- AIやロボットでは補えない人間ならではの領域を分析し、価値を創造する力。
- 新しいツールや考え方を貪欲に学び続ける姿勢。
AIを恐れたり、過度に期待したりするのではなく、冷静にその本質を見極め、自らの武器として活用する。その先にこそ、個人と企業の成長があると信じています。
参照元一覧
- [1] WCNC Charlotte: "Why it's increasingly difficult to find jobs in software development" (2024年9月20日) - The Wall Street Journalのレポートを引用し、Indeedのソフトウェア開発職の求人情報が2020年から30%減少したと報道。本記事ではこの状況を「新人プログラマの採用減」の背景として言及しています。
※この記事の他の部分は、筆者の経験と所感に基づき作成されています。